終活で自分の葬儀の準備を行う人は増えています。
しかし、自分の葬儀の準備と言われても、なかなか想像やイメージがつかないのではないでしょうか。
値段も考えずに夢だけでプランを決めれば、残された家族は途方に暮れてしまうでしょう。これでは準備をした意味がなくなってしまいます。
終活で葬儀を準備するための知識や方法をご紹介します。
終活で葬儀を準備する流れ
終活で葬儀の準備をするときに、葬儀社を決めてからプランを練っていこうと思うかもしれません。
ですが、事前にある程度のプランを持ってから、葬儀社に相談したほうがスムーズに決まります。葬儀社に行くまでに以下の点を考えておきましょう。
喪主の決定
一般的には、慣習に従って以下の順で喪主を務めるのが多いです。
順位 | 故人との関係(続柄) |
---|---|
1 | 配偶者 |
2 | 長男 |
3 | 次男以降の直系男子 |
4 | 長女 |
5 | 次女以降の直系女子 |
6 | 故人の両親 |
7 | 故人の兄弟姉妹 |
家督制度(家の跡取りは長男が最も優先される)がある時代は、後継者となる故人の息子など血縁関係にある人が喪主を務めることが多かったのですが、現在はこうした家督制度の考え方は薄くなりつつあり、配偶者の優先順位が最も高くなっています。
なお、喪主は複数人いても問題ありません。
故人が遺言書などで喪主を指名している場合は、指名された人が優先されます。
自分の葬儀の喪主を務めてほしいと思う人がいれば、友人(※)であっても指名できますが、配偶者や血縁関係者以外を喪主に指名するのであれば、家族や親族が納得できる理由も合わせて必要です。
(※)友人が喪主を務める場合は喪主とは呼ばず、友人代表などと称されます。
宗教・宗派の確認
菩提寺があり、菩提寺に読経依頼をするのであれば特に問題はありません。
菩提寺が分からないときは、親族などにしっかりと確認してください。なぜなら、菩提寺があるのに他のお寺に読経を依頼してしまうと、後にトラブルになる可能性があるからです。
また、菩提寺が遠方にあるため、近くの違うお寺に読経依頼を行いたいなどのケースも注意が必要です。
たとえ菩提寺が遠方であっても、読経依頼は菩提寺に行うのが一般的です。菩提寺の僧侶が行けなくても、同じ宗派のお寺を紹介してくれることもあります。
自らが選んだ他の宗派に依頼をしたいのであれば、菩提寺との話し合いによっては離壇することになるかもしれません。
なお、すでに菩提寺がなくなっていたり、菩提寺がないなどの理由で読経依頼ができるお寺がない場合は、葬儀社が近くの地域のお寺を案内してくれます。
訃報連絡・参列者リストの作成
自分の葬儀に来てほしい人を明確にしておくのは、次の2つのメリットがあります。
- 遺族が連絡に迷ったり、困るのを回避できる
- 葬儀の規模が予想できる
リストを作成するときは訃報のみを知らせるのか、葬儀への参列も併せてお願いするのか分けておくと、遺族はよりスムーズに連絡が行えます。
葬儀の規模・形式の決定
全日本冠婚葬祭互助協会の調査では、葬儀の形式は仏式が9割近くと圧倒的です。しかしこれは、仏教を信仰している人がそれだけ多いのが理由ではありません。
日本では宗教を特に意識しなくても、仏壇に手を合わせたり、お盆や彼岸にお墓参りを行うのが慣習化されています。そのため、葬儀は仏式で行うものと漠然と思っている人が多いのです。
信仰している宗教があれば、神式やキリスト式などを選んでも問題はありません。近年は宗教色の強い葬儀を避けたいと思う人も増えており、無宗教葬を行う人もいます。
また、仏式で葬儀を行う場合には、葬儀の種類によって希望の形を選べます。
葬儀の種類 | 葬儀の内容 | おおよその参列者 |
---|---|---|
一般葬 | 現在、日本において最もポピュラーな葬儀です。1日目にお通夜、2日目に葬儀・告別式を行います。参列者は遺族や親族を始め、友人、会社関係者、近所の人など広範囲に及びます。 | 50~200人 |
家族葬 | 葬儀の内容自体は一般葬と変わりませんが、参列者が「家族のみ」「ごく限られた親族と親しい人のみ」などに限定されます。 | 10~50人 |
一日葬 | お通夜を行わず、葬儀・告別式のみの形になります。参列者は一般葬と同様に限定されませんが、遺族と親族のみで行われることが多いです。 | 30~100人 |
直葬 | お通夜、葬儀・告別式を行わず、納棺後に火葬場にて火葬を行います。遺族のみが参列することが多いです。 | 5~10人 |
葬儀の形式が決まれば、おのずと参列者の数(範囲)も決まってくるでしょう。参列者の数によって葬儀の規模が見えてくるので、どの葬儀を行うと良いのか分かりやすくなります。
葬儀社の選定
病院で亡くなると、霊安室にいられる時間は短く、臨終後は速やかに病院から出るように促されます。葬儀社が決まっていないと、ご遺体の搬送も含めて、病院の提携している葬儀社に葬儀も任せる流れになることも多いです。
しかし、それでは、ほかの葬儀社と費用やプランなどの比較ができません。
葬儀を執り行った後に、「こっちの葬儀社のほうが故人の希望を叶える葬儀ができた」「いわれるがまま決めてしまい、費用が想定よりも高額なってしまった」など後悔するかもしれません。
こうした事態を防ぐには、生前に複数の葬儀社から見積もりを取り、費用や内容が意向に沿うところに葬儀を任せるよう、本人が手配しておくのが安心です。
葬儀社との打ち合わせ
葬儀社が決まったら、自分の希望する葬儀の内容を伝え、具体的にプランに落とし込んでいきましょう。
いらないものを整理しながら、一つずつ冷静に考えていきます。葬儀社のスタッフはこれまで数多くの遺族の葬儀の準備を見てるので、分からないことは聞いたほうが様々なアドバイスをしてもらえます。
このとき、自分一人ですべて決めてしまうと、後から家族が納得できずに変更してしまうかもしれません。できれば家族も同席の元、希望や意向を聞いてもらうのが良いでしょう。
また、葬儀社との打ち合わせに家族が同席すれば、担当者と顔見知りになれます。担当者の人柄を事前に知っておけば、「この人ならいざというときに任せても大丈夫」と家族も安心できるでしょう。
費用の確保
葬儀費用は、生命保険の死亡保険金で賄うのが多いです。
しかし、死亡保険金が支払われるのは、請求に必要なすべての書類が到着した日の翌営業日から数えて5営業日以内としている生命保険会社が多いため、葬儀まで間に合わない可能性もあるでしょう。
そこで、死亡保険金とは別に葬儀のために保険や積立を行う人が増えています。
葬儀費用の確保には、主に次の2とおり。
- 少額短期保険に加入
- 互助会に入会
小学短期保険は葬儀保険(終活保険)とも呼ばれ、その名のとおり契約者の死亡後は葬儀に関する費用として使うことができます。
互助会は正式名称を「全日本冠婚葬祭互助会」といい、毎月積み立てたお金を葬儀または結婚式に使うことができます。
遺影写真の決定
遺影写真を前もって準備していないと、スナップ写真の中から遺影に使えそうな写真を選ぶことになります。葬儀社やインターネットの遺影作成業者に依頼して、見栄えが良く加工してもらえますが、できれば自分で用意しておくのが良いでしょう。
遺影撮影は写真館やスタジオで行えるほか、葬儀社の見学会や相談会などで遺影撮影のイベントを行っていることもあるので利用してみても良いでしょう。
自分の葬式にかけたい曲の選定
お葬式で曲を流す主なタイミングは、以下のとおりになります。
- お葬式の前
- 故人を紹介するとき
- 弔電やお別れの言葉の披露
- 最後のお別れ
- 出棺
曲を流すタイミングに決まりはありませんが、お葬式の間ずっと曲が流れていると参列者の気が散るためおすすめしません。
また、ジャンルについても特に制限はなく、基本的にはお葬式にかけたい曲は自分の好きな曲を選べます。ただし、雰囲気にそぐわない曲は、葬儀社からOKが出ない場合もあるので気をつけてください。
さらに選んだ曲によっては著作権を侵害する恐れもあります。正確には、JASRAC(日本音楽著作権協会)の許諾を得ずに葬儀場で曲を流すと、演奏権の侵害となる可能性があります。JASRACの管理する楽曲を使用するには、葬儀社がJASRACと契約した上で楽曲使用料を支払う必要があるため、必ず確認するようにしてください。
なお、お葬式に流す曲の定番であるクラシックは著作権が消滅していることが多く、流しても著作権の侵害に当たりません。ただし、著作権の消滅は楽曲の作詞家・作曲家が亡くなって70年が経過していることが条件。ご健在の音楽家や、亡くなって70年過ぎていない場合には適用されないので注意しましょう。
葬儀社に相談する流れ
自分の葬儀について自分で決めるという経験は、誰もが一度きりで初めてのため、どのような流れで葬儀社に相談すればよいのか分からない方がほとんどでしょう。
インターネットでホームページを閲覧したり無料の資料請求を行って、「この葬儀社の話を聞いてみたい」と思うところがあれば、次の流れで相談してみましょう。
事前相談を申し込む
事前相談は基本的には常時受け付けていることが多いですが、イベントとして行っていることもあります。都合の良い日に予約をしましょう。
なお、事前相談の前に、電話で悩みや不安を聞いてもらうことも可能です。24時間365日、専門のスタッフが対応しているのでまずは気軽に相談してみても良いでしょう。
日程を決める
事前相談をお願いしたい旨を伝えたら、続いて事前相談をいつ、どこで行うか決めましょう。
場所は相談する側が葬儀社の窓口に出向くのが多いですが、自宅や自宅以外の指定場所を希望する場合は出張相談を受け付けている葬儀社がほとんどです。自宅で相談をするときに家族や周囲の目が気になると伝えておけば、葬儀社の社名やロゴが入っていない車で来るなど配慮もしてもらえます。
相談・見学に行く
葬儀社の窓口での相談では、相談だけではなく葬儀会場の下見や、葬儀社のスタッフの対応を体感できます。
自分の最後を託す相手であるので、費用や設備の面だけではなく、担当者が誠実で丁寧な人柄であるかを見極めるのはとても大切です。
エンディングノートの用意・記入
エンディングノートとは、人生の終末期についての希望を記したノートになります。
葬儀の形式や内容はもちろん、友人関係を書き留めておけば、家族が参列者の判断をつけやすくなるでしょう。
また、自分の死後に知らないと困るであろう財産の内容や相続、銀行通帳の保管場所などを家族に伝える目的にも使えます。ただし、エンディングノートに法的効力はないので、遺言書と同じように使うことはできません。
事務的な内容だけではなく、楽しかった思い出や辛かった思い出を書き残しながら、ゆっくりと人生の振り返りも行えます。
自分の葬式を準備するメリット
自分が死んだ後のことを家族に任せっきりにしては、安心して旅立てないと悩む人は多いです。
すっきりとした気持ちで残りの人生を過ごしたいなら、終活で葬儀の準備を始めてみましょう。
葬式を自分の希望する形式にできる
これまでは「生きているうちに葬儀の話をするのは縁起が悪い」として避けられてきました。
しかし、生きている今にしか、自分の希望は伝えられません。
家族だけで静かに見送ってほしい。好きな花をたくさん飾ってほしい。棺には大事にしていたコレクションを一緒にいれてほしい、など。
自分らしい最後を、自分で決められます。
遺族の負担が減る・心構えができる
故人の希望を知らないままで葬儀の準備をすると、遺族にかかる負担はとても大きくなります。
たくさんの人に見送られたいのか、家族だけで静かに見送ってほしいのか。祭壇に飾りたい花はなかったのか。棺に大事にしていたコレクションを入れるべきか取っておくべきか、など。
こうした細かい取り決めを、遺族だけで話し合ってもなかなか落としどころが見つかりません。しかし、本人の意思や希望があればそれに沿って決められます。
また、本人が事前に自分の葬儀について様々なことを決めていると知れば、いつか来る「そのとき」の心構えができる家族は多いでしょう。
費用の具体的な見通しがつく
亡くなった後に複数の葬儀社から見積もりを取って選ぶのは、それだけでも大きな負担になりますし、次々と決めなければいけないことが多いので、葬儀社に言われるままプランを決めてしまうことも少なくありません。
本人の希望する葬儀の形が明確であれば、それに伴って葬儀にかかる費用も具体的に出せます。
自分の葬式を準備する注意点
終活における葬儀の準備では、自分の希望を叶えられるよう、家族を始めとした周囲に協力してもらうことがもっとも大切です。
家族に快く協力してもらうために、以下の点に注意をしましょう。
家族の同意を得ておく
実際に葬儀を執り行うのは家族です。
たとえ本人の希望であっても、同意できない内容であれば当日に変更されてしまう可能性はあるでしょう。
自分の希望や意思を反映してもらうには、あからじめ家族に同意を得ておく必要があります。
準備している旨を伝えておく
自分が亡くなった後に、いきなり「実は葬儀を本人が準備していた」と知って驚かない家族はいません。中にはそのような行動を取らせてしまったと、自分自身を責める人がいるかもしれません。
あらかじめ理解や納得を得ておきましょう。
葬儀の準備を進めることで、自分が安心できる旨を分かってもらうのが大切です。
葬儀社が倒産する可能性も考慮する
日本は世界トップの高齢社会でありながら、葬儀社の倒産は相次いでいます。
葬儀社と事前契約をした段階から長い年月が経っていれば、葬儀社が倒産している可能性は否定できません。
葬儀社を決めるときは費用やプランだけではなく、経営状態も考慮する必要はあるでしょう。
終活で葬儀の準備をするなら葬儀社への相談も検討
自分の葬儀なのだから、自分が何もかも決めて良いとはなりません。
家族の同意が得られなければ、思い描いた葬儀の実現が叶わないだけではなく、家族や葬儀社に負担をかけてしまいます。
特に菩提寺との関係や曲の著作権などは、素人にはなかなか分からない部分です。
終活で葬儀を準備するなら、まずは複数の葬儀社に電話で相談をしたり資料を取り寄せて、良さそうなところから事前相談をしてみましょう。