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福祉葬とは?適用条件や流れを解説|生活保護者の香典は没収されるか

福祉葬とは? 葬儀社

生活保護受給者であっても、ご遺体の火葬は必須。お金はないけれどお葬式はどうにか挙げたいとお悩みの生活保護受給者は、福祉葬を利用すべきです。

あなたは、福祉葬を知っていますか?終活や葬儀に関する話題がトレンドに上がる中で、未だに貧困層の葬儀はタブー視されており、福祉葬に関する情報はあまり出回っていません。

天涯孤独の方やお金に困っている方でも、福祉葬でお葬式を挙げることは可能。本記事で福祉葬の基本的な情報を理解して、誰もが平等にお葬式を挙げられることを学びましょう。

福祉葬とは?

福祉葬とは?内容を解説

福祉葬とは、生活保護受給者やその世帯の一員が亡くなった際に自治体が費用を補填する葬儀形式です。内容としては、告別式や通夜を行わず、シンプルな火葬のみ。

生活保護を受けている人の中には、葬儀費用を支払うのが難しいほど経済的に困窮している人も多いはずです。自治体がお葬式のお金を出してくれるのは有難いですが、具体的にどんな葬儀が執り行われるのか分からない方のために、以下で福祉葬の基本的な概要を紹介します。

福祉葬とは

福祉葬は生活保護受給者や生活保護を受けている世帯の一員が亡くなった際に、自治体が葬儀扶助の範囲内で葬儀を執り行う形式を指します。福祉葬は、生活保護法第18条「葬祭扶助」に基いた国民の権利です。福祉葬は、以下の別名でも知られています。

  • 民生葬
  • 生活保護葬

民生葬とはどんなお葬式かといった疑問がネットや巷で浮上していますが、福祉葬と同意義であることを頭に入れておきましょう。

福祉葬は、地域の民生委員や役所の福祉課役員から葬儀社に依頼を出して、葬儀実施という流れで行われます。費用は故人や遺族を通さず葬儀社に直接支払われるため、遺された遺族が費用の心配をする必要はありません。

葬儀の内容は最低限

福祉葬は直葬(火葬)式と同等の内容で、費用は税金で賄われます。

  • 死亡場所から安置場所までの搬送
  • 安置場所から火葬畳間ので搬送
  • 納棺
  • 火葬

福祉葬では、上記の内容を実施するために必要最低限の物品をサービスを提供します。必要最低限の物品には、お花や遺影写真などは含まれていません。故人の亡くなり方によっては死体検案書も必要になるため、死体検案書の役所手続きも福祉葬で代行。検案書発行費用も役所が負担してくれます。

福祉葬は僧侶による読経も省略されており、かなり簡素な流儀で行われます。寺院の手配にも対応していません。一方で火葬まで日数が長いご家庭では、その間のドライアイス代を負担するなど融通が利く市町村があるのも事実。福祉葬ではご遺体を火葬に出すまでのケアや手続きを代行してくれますが、通常のお葬式のようなプランは実現できないと考えておきましょう。服装は通常のお葬式と同様に喪服で構いません。

費用

葬祭扶助による福祉葬費用は、法律で定められています。法的な基準額の範囲は、福祉葬費用は以下のように定義。

年齢 金額
故人が12歳未満 16万4,000円以内
故人が12歳以上 20万6,000円以内

上記はあくまでも平均的な金額。自治体ごとに、葬祭扶助費用は異なります。生活保護を受給していないけれどお葬式を挙げたら経済的に困窮するとお悩みの方は、国民健康保険に入っていれば葬祭費を受け取れるので、そちらを利用してください。例えば大阪府東大阪市では、国保加入者に葬祭費として5万円を支給しています。

現在福祉葬を検討中で葬儀費用について不安がある方は、近隣の福祉課に相談しましょう。葬儀会社に相談する手段もおすすめです。役所は時間が限られていますが、葬儀社なら24時間365日電話相談無料。ご自分の生活スタイルに合わせて、質問しやすい機関に連絡してください。

福祉葬の条件

福祉葬の条件

葬儀費用無料とはいえ、福祉葬を挙げるには条件があります。誰でも福祉葬を行えるわけではないので、注意しましょう。

福祉葬実施には生活保護受給や支払い能力がないことが絶対条件。あなたが今生活保護を受給しているなら福祉葬実施権利を有しています。福祉葬利用条件を確認し、あなたのご家庭が該当しているか把握してください。

故人が生活保護を受給していた

福祉葬を執り行うには、故人が生活保護受給者だったことが重要。

生活保護は生活困窮者に向けて国が金銭扶助を保障する制度。受給者本人が亡くなるまで有効であり。お葬式も生活保護適用範囲内です。

喪主が生活保護を受給している

故人だけでなく喪主が生活保護を受給しているケースでも、福祉葬実施が可能です。

故人と喪主が同一世帯で生活保護を受給していたご家庭も、福祉葬が適用されます。福祉葬希望者の葬儀費用を賄ってくれる葬祭扶助は、生活保護受給者本人と世帯を共にする家族の味方でもあるのです。

親族に支払い能力がない

故人に親族がいたとして親族が生活保護受給者であり葬儀費用支払い能力がないなら、福祉葬を執り行えます。親族が生活保護を受給していないとしても、非常に生活に困窮していて明日生きるのも難しいといったケースであれば、葬祭扶助が適用されるでしょう。

福祉葬を行うには役所による面談と審査が必要です。現在自分の家庭が葬祭扶助対象なのか心配な方は、まず役所に足を運んでください。

故人に親族がいない

故人に身寄りが一切なく天涯孤独であるなら、福祉葬を執り行えます。親族や家族が誰もいない人が死亡すると、警察や施設から役所に連絡が入り自治体が福祉葬手続きを開始。あなたが生活保護を受給していなくても貧困層で身寄りがいないなら、葬祭扶助適用範囲になります。

福祉葬を行うには、故人に支払い能力がないだけでなく葬儀費用を支払える人物が周りに誰もいないことが大事です。

福祉葬の注意点

福祉葬の注意点

福祉葬は、全ての葬儀社に対応しているわけではありません。生活保護を受給していても福祉葬対象外になるケースがあります。

事前に注意点を知っておくことで、福祉葬を取り巻くトラブルを防止できるでしょう。

葬儀社によっては福祉葬に対応できない

葬儀会社は数多ありますが、福祉葬非対応の葬儀社もあります。依頼したい葬儀社が福祉葬受付しているか、しっかり確認してください。

もし福祉葬面談や審査を通過しても、依頼する葬儀社が福祉葬に対応していなければ二度手間になるでしょう。小さなお葬式など大手葬儀社は大半が福祉葬に対応しているので、葬儀社を探す際にはなるべく有名な会社を調査してください。

遺産がある場合は対象外になる

故人や喪主が生活保護受給者でも、遺産や預貯金があれば福祉葬対象外になります。遺産があれば葬儀費用を賄えると考えるのが妥当だからです。

遺産があるけれど葬儀費用には及ばないケースでは、不足分のみの葬祭補助となります。福祉葬はあくまでも葬儀費用を支払えない人のための救済措置。遺産や預貯金など金銭の代わりになるものを有している人は厳正に対象から弾かれてしまいます。

オプション等の追加はできない

福祉葬は、葬儀内容を限定しています。自己資金でプランを追加することは許されません。

そもそも福祉葬は経済的困窮により最低限のお葬式を行えない人に向けた制度なので、追加料金を支払えるなら葬祭扶助は必要ないとみなされます。福祉葬を行う際にはきちんとルールに則り、法律で規定された内容に従いましょう。

お墓の購入は葬祭扶助の対象外になる

葬祭扶助は骨壺に骨を入れるところまでが対象なので、お墓購入費用は賄えません。福祉葬を行った生活保護受給者のお骨は、以下の方法で納骨するのがおすすめ。

  • 納骨堂を利用する
  • 遺族が手元で保管

納骨堂は貧困に喘ぐ生活保護受給者でも気軽に利用できますが、その分倍率が高いので注意してください。納骨期限のない遺族による保管が一番利便性に長けていますが、遺族によるお骨保管も管理者がいなくなったときのことを考えると不安が募るものです。お墓を購入するためのお金をコツコツ積み立てて、暫定的な手段として遺族がお骨を保管しておくという考えが良いでしょう。

事前に申請が必要

福祉葬を挙げるには、必ず事前申請が必要です。実際に福祉葬を執り行えるかは、担当ケースワーカーの判断に委ねられます。利用条件に該当する人のみが、福祉葬を実施できるのです。

申請が受理されず葬儀費用支給が実現しなければ、葬儀費用は家族が負担します。

福祉葬の申請方法や流れ

福祉葬の申請方法や流れ

これから福祉葬を申請したいけれど、どんな流れで役所に申請を持ちかければ良いのか分からないとお悩みの方に、福祉葬を行うまでに必要な手続きを紹介します。

福祉葬を執り行うには、連絡すべき人がたくさんいます。誰にどの言伝をすれば良いのか混乱しますが、1つ1つの流れを把握すれば戸惑わず申請を進められるでしょう。

ケースワーカーなどに連絡する

福祉葬を行うには、民生委員やケースワーカーに連絡する必要があります。生活保護受給者とケースワーカーは切っても切れない関係。故人の親族や同居人がケースワーカーに本人の死亡を告げるところから、福祉葬に関する申請が始まります。

病院や自宅からのご遺体お迎えは、まずケースワーカーに連絡してからです。

自治体の福祉事務所に葬祭扶助の申請を行う

ケースワーカーとコンタクトを取れたら、福祉事務所で葬祭扶助の申請をしてください。基本的に葬祭扶助の申請は以下の場所で行います。

  • 申請者の住民票がある自治体
  • 生活保護受給者本人が保護費をもらっていた自治体の福祉事務所

申請は葬儀を執り行う前に必ず済ませましょう。申請時には面談と審査があり、双方を通過した人のみが福祉葬実施の権利を手にします。

福祉葬に対応できる葬儀社に連絡する

福祉葬申請手続きが済んだら、葬儀社に福祉葬を行う旨を伝えます。福祉葬は全ての葬儀社で実施しているわけではありません。必ず福祉葬対応の葬儀社に連絡しましょう。

栃木県や埼玉県に店舗を構えるさくらホールは、福祉葬に対応していることで有名です。さくらホールのホームページに福祉葬に関する案内が記載されているので、対象地域に住んでいる方はネットで調べてみましょう。

葬儀社の公式サイトを見れば、福祉葬対応可否は記載されています。近隣に葬儀所があるなら、電話で福祉葬に対応しているか質問しても問題ありません。

葬儀社と打ち合わせする

依頼する葬儀社が決まったら、専門スタッフと打ち合わせをしてください。ご家族のスケジュールと会社側のスケジュールを調整し、両者に負担のない日程を取り決めましょう。

人気のある葬儀社はスケジュールが埋まっていてなかなか予約を取れない可能性がありますが、葬儀社スタッフは柔軟に対応してくれるので安心してください。

福祉葬を行う

全ての手続きが完了すると、お通夜や告別式を省略した火葬のみの福祉葬が執り行われます。

葬儀費用の支払いは、葬儀が終了してから。福祉葬の葬儀費用は自治体が葬儀社に支払います。葬儀費用が喪主に請求されることはないので、お金に関する心配は無用です。

福祉葬の申請が通らなかった場合

福祉葬の申請が通らなかった場合

福祉葬の申請許可が下りなかったら、葬儀費用は家族が負担します。

故人に葬儀費用支払い能力がなくても、必ず葬祭扶助申請が通るとは限りません。福祉葬を利用するに値しないと判断されれば、申請を却下される可能性が十分にありえます。

直葬・火葬式を選択する

葬儀費用を家族が負担する際に気になるのは、経済面。福祉葬と同じプランの火葬式を選択すれば、葬儀費用は最低限に抑えられます。

直葬や火葬式は、お葬式の中で最も費用が安いプランです。10万円以下で挙げられる火葬式もあるので、生活保護受給世帯であっても負担できる家庭は多いでしょう。

葬儀の規模を縮小する

通常の火葬は福祉葬同様お通夜と告別式がありません。「葬儀費用を自分達で負担するならお通夜と告別式を挙げたい」と思う方は、小規模な家族葬及び一日葬を行いましょう。

家族葬に含まれるプランでも、不要と判断すれば排除できるものが多数。追加オプションが発生しなければ、火葬と大差ない金額で家族葬を行えるケースも多いです。費用について不明点があれば、まずは葬儀社に相談してみましょう。

福祉葬でよくある質問

福祉葬でよくある質問

馴染みのない葬儀形式ゆえ疑問が多い福祉葬。お葬式は葬儀が終了してからも、やるべきことが複数あります。生活保護受給者は周りに頼れる人が少なく、葬儀後の手続きに関する悩みを抱えがちでしょう。

これから紹介する内容を参考に、福祉葬を挙げた後の諸手続きを円滑に済ませてください。

生活保護者が香典を受け取ったら没収される?

生活保護受給者でも香典を受け取れます。香典を没収されることは、ありえません。生活保護受給者は収入を自治体に報告する義務がありますが、香典は収入とみなされないため報告不要。生活保護を受給している福祉葬参列者でも扶助範囲内であればお金を受け取って良いのです。

香典返しや返礼品は扶助の対象にならないので、気を付けましょう。

福祉葬の場合に納骨はどうする?

福祉葬を適用している葬祭扶助では、お墓購入代金を対象範囲外とみなしています。生活保護受給者が福祉葬を行ったら、以下の方法で納骨するのがベターでしょう。それぞれの方法におけるメリットとデメリットも記載しました。

項目 納骨堂への保菅 遺族の手元で保管
メリット
  • リーズナブル
  • お墓参りしやすい
  • 無期限でお骨を保管できる
  • お金がかからない
デメリット
  • 倍率が高い
  • 落選する可能性がある
  • お骨の行方を考える必要がある

自宅でお骨を保管したら、庭や裏山にお骨を埋めるのは違法行為。お骨を処理したいなら、納骨堂に依頼するか新たにお墓を購入するなど代替手段を考えなければいけません。

福祉葬は葬祭扶助で行われる葬儀

福祉葬は葬祭扶助で行われる葬儀

福祉葬は法で定められた、公的な制度。もしお金がなくてお葬式を挙げられないと嘆いているなら、まずはケースワーカーに相談してみましょう。生活保護受給者であれば、申請通過の可能性はかなり高いです。

葬儀費用は普通に生きている人々にとって、大きな負担としてのしかかります。生活保護受給者であれば生活が苦しいため、尚更費用負担が難しいでしょう。お葬式は、故人の人生に対する敬意表明の儀式。生活保護受給者であっても、火葬という形でお葬式を挙げる権利があるのです。

福祉葬を挙げるには、手続きや申請など手を付けるべきことがたくさんあります。少し時間と労力を奪われますが、家族を弔うべく迅速に申請を済ませましょう。

お葬式に関する不安を一人で抱え込む必要はありません。国や自治体に力を借りて、悔いのないお葬式を挙げてください。