同じ仏式の葬儀であっても、日蓮宗や真言宗など宗派によって形式や流れが存在し、作法やマナーも大きく異なります。内容や作法が異なれば、必要となる費用にも違いが出てくるものです。
これから葬儀を執り行う人や、自身の終活のための準備をしている人(信士)の中には、どれくらいの費用を用意すればいいのか不安に感じていることもあるでしょう。
ここでは、数ある仏教の宗派の中から、浄土真宗の葬儀費用について解説していきます。
浄土真宗の葬儀費用
お葬式の準備は何かと慌ただしく、関係各所への手続きや葬儀場探しなど、手配や依頼に奔走することになります。
そのような状況で、葬儀費用がいくら必要なのか金額が不明瞭だと不安に感じることもあるでしょう。
ここでは、浄土真宗で葬儀する際の費用について、項目別に解説していきます。
お布施
ほかの宗派では、お布施は僧侶に対する感謝を表するものですが、浄土真宗におけるお布施は「阿弥陀如来」への感謝を伝えるものとして渡します。そのため、明確な金額は定められていないことから、お気持ちで渡しても問題はありませんが、相場に合わせて支払うのが一般的です。
家族葬か否か、参列者の人数、斎場そのものの規模などその相場は10万~30万円程とされており、こちらは通夜・葬儀・告別式など、全ての儀式を一括しての金額です。
50万円程が相場となっている他宗があることを考えると、良心的な金額であるといえるでしょう。
御車料|交通費
御車料とは、他宗と同様に遠方から来てくれる僧侶に対して感謝の気持ちを表すものです。
言い換えれば、お坊さんに対しての交通費であり、その相場は5,000~1万円程度とされています。往復のタクシー代と考えると、金額もイメージしやすいことでしょう。
ただし、葬礼・法事を営む寺である菩提寺が遠方にあり、1万円を超えてしまうケースもあります。御車料の金額を検討する際には、こうした移動距離も加味して決めると良いでしょう。
お膳料|会食費
お膳料とは、葬儀や法事の後に設けられる会食の席に、僧侶が出席を辞退した際に渡す費用です。
その金額は、1人あたりの会食費にお礼の気持ち分を加えて支払うことが一般的です。
法要の会食相場は1人あたり5,000~1万円程度ですが、高級な会食であればその分お膳料も上がります。
なお、会食の席自体を設けていない場合には、僧侶に対するお膳料の支払いは不要であることを覚えておきましょう。
法名料
浄土真宗における法名とは、故人の生前に三宝へ帰依し、仏弟子として生きていくことを誓い授かる名前のことです。
臨済宗をはじめ、故人につけられる戒名は希望するランクによって対価が異なり、最上位にもなると100万円を超えることもあります。
一方、浄土真宗で法名を授与される際は、院号のように格式の高さを表すものはあるものの、本来は御布施が必要という決まりはありません。
しかし、通例では3万~10万円程のお布施を渡すのが一般的となっているため、覚えておくようにしましょう。
生前に帰敬式を受けていた場合には費用が安くなったり、入れてほしい文字を指定した際には高くなったりすることにも注目です。
浄土真宗における法要ごとのお布施の相場
葬儀はお通夜や告別式だけではなく、その後にも初七日や四十九日などの法要が執り行われ、その際にも費用が発生します。
ここでは、浄土真宗における法要ごとのお布施の相場について解説していきます。
初七日法要
初七日法要とは、故人が亡くなってから7日目に行われる法要のことです。地域によって違いはありますが、葬儀を行った日ではなく、一般的に故人の祥月命日から7日目であることが一般的です。
また、葬儀と同日に執り行われることもあるため、どのようなタイミングで執り行うのか事前に確認しておくと慌てずに済むでしょう。
初七日法要でのお布施の相場は、3万円~5万円程度です。葬儀の際のお布施よりも少額となっています。
なお、浄土真宗の初七日法要は他宗とは違い、故人や遺族を救済してくれた阿弥陀如来への感謝を表すものです。そのため、封筒の表書きには「読経料」や「謝礼」と記載しないという書き方のマナーであることに注意しましょう。
四十九日法要
四十九日法要とは、故人の命日から49日目に執り行われる法要のことで、遺族が日常に戻るための区切りとなる重要な儀式です。
その際のお布施の相場は、3万円~5万円程度が相場となっています。
四十九日では、故人を思い出しながら食事をする精進落とし・会食を行うことが一般的であるため、御膳料についても意識しておきましょう。
建碑法要
建碑法要とは、お墓を新たに建墓した際に執り行われる法要のこと、御移徙(おわたまし)とも呼ばれます。
浄土真宗では、お墓や仏像に霊魂をこめるという考えがなく、故人の霊魂が宿る位牌を用いないといった違いはあるものの、お布施の金額は平均2万円~3万円程度と他宗と差はありません。
一周忌法要
一周忌法要とは、故人の命日から1年目に行われるもので、以降にも行われる年忌法要の中で最も重要とされています。
その際のお布施の相場は、3万円~5万円ほどです。別途、発生するお車代は5,000円~1万円程度。お膳料は、5,000円~2万円を目安にしておくと良いでしょう。
十三回忌
十三回忌とは、故人の13年目の命日(亡くなって12年後の命日)に執り行われる法要のことです。
お招きする人に制限は特に設けられていませんが、家族のみで行われるのが一般的であり、お布施の相場は1万円~5万円とされています。
仏教の世界では、回忌法要を重ねるごとに仏と一体化すると考えられており、十三回忌では大日如来と一体となる基礎知識も覚えておくと良いでしょう。
また、浄土真宗における命日行事の代表的な七回忌においてもお布施の相場は同様ですが、故人の菩提を追悼するためにお院に寄付することが一般的です。
エリアによってお金の渡し方も導師に直接渡すのか寺院に渡すのかなど、方法が異なることもあるため、不安な人は身構えず専門家である葬儀社やお寺へ気軽に問い合わせてみましょう。
浄土真宗の概要
日本における浄土真宗は、数ある仏教宗派のなかでも非常に規模が大きく、本願寺派を中心とする浄土真宗本流は最大級の宗派です。さらに浄土真宗本願寺派から分派して浄土真宗大谷派が広まるなど、同じ宗教であっても多岐に渡っています。
葬儀の執り行いや参列する際に、流れに身を任せるのではなく、宗派について把握していると儀式の意味合いを理解できるようになります。
本尊
浄土真宗の本尊は、阿弥陀如来(あみだにょらい)です。
阿弥陀如来は、西方極楽浄土に住むとされる仏であり、生前に誓願した「南無阿弥陀仏」という称号を称えることで、極楽浄土に往生することができるとされています。
浄土真宗では、阿弥陀如来の教えに従い、人間が自己の力で救済を得ることはできないと考えられています。そのため、阿弥陀如来の救いを受けることが目的とされ、そのための信仰が重要視されています。
経典
浄土真宗の経典は、『親鸞聖人全集』と呼ばれる一連の著作があります。この中には、親鸞聖人が阿弥陀如来の教えに基づいて説いたとされる数多くの文章や歌が含まれており、最も有名な経典としては、「御影観(ぎょえかん)」や「願文(がんもん)」があります。
また、浄土真宗には、阿弥陀如来の説法をまとめたとされる「浄土三部経」という次の3つから構成されています。
- 無量寿経
- 観無量寿経
- 佛説極楽往生儀軌経
そのほか、浄土真宗では他の仏教宗派の経典についても敬意を払っており、「法華経」や「般若心経」などの経典も尊重されています。
種類 | 内容 |
---|---|
無量寿経 | 阿弥陀如来が自身の誓願や極楽浄土の様子を説く経典 |
観無量寿経 | 阿弥陀如来の説法を聞いた人々が、極楽浄土に到着した後の様子を描いた経典 |
佛説極楽往生儀軌経 | 極楽浄土に往生するための儀式や行法について説かれた経典 |
他宗との大きな違い
浄土真宗と他宗の大きな違いは、救いの仕方にあります。
浄土真宗では自己の力では救いを得ることができず、阿弥陀如来の救いを信じることが重要とされます。一方、他の仏教宗派では、自己の努力によって救いを得ることができるとされています。
また、浄土真宗では修行や禁欲などの行を重視することはありませんが、ほかの仏教宗派では修行や禁欲が重要な役割を果たしています。
このように救いに対する考え方が異なることから、浄土真宗には戒名や位牌、枕飯や枕団子、清め塩がないことが他宗との大きな違いであるといえるでしょう。
浄土真宗の葬儀における費用は50万円前後
浄土真宗の葬儀費用は総額で50万円前後が相場とされています。
その内訳は、次のとおり。
項目 | 金額相場 |
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お布施 | 10~30万円 |
御車料 | 5,000~1万円 |
お膳料 | 5,000~1万円 |
法名料 | 3万~10万円 |
これらは目安であり、同じ浄土真宗であっても地域や寺院によって差があることにも注意が必要です。
また、葬儀の後にも初七日や四十九日などの法要が執り行われ、その際にもお布施をお渡しすることになります。
本記事では喪主や遺族など葬儀を執り行う側の費用について解説しましたが、浄土真宗の葬儀では参列者は「供養料」と呼ばれる香典を寄与するのも一般的であるため、葬儀に参加する人は事前確認をしておくと当日安心です。相場は数千円~1万円程度ですが、故人や遺族との付き合いや関係性から適宜対応することをおすすめします。
このように、葬儀ではさまざまな種類の金銭が発生するため、複数の葬儀社から相見積もりをもらい、より良い葬儀をめざしましょう。